IAS第12号「法人所得税」 税効果会計について
IAS第12号は、日本基準では税効果会計と呼ばれている会計処理について記述しています。日本基準とIAS/IFRS間の大きな違いはありません。
IAS第12号は当期以前に支払義務が生じた税額を負債として認識することを求めています。
しかし、日本基準では以前から「未払法人税等」として認識していますので、改めて対応をする必要はありません。
(1)財務会計と税務会計の差異
企業の財政状態・経営成績を表示する財務会計と、課税所得を計算する税務会計は原則として同様の会計処理を行いますが、一部で取扱が異なります。
なお、財務会計では収益・費用と言いますが、税務会計では益金・損金と言います。
「財務会計では当期の費用となるけれど、税務会計では将来損金になる」ものを将来減算一時差異といいます。将来減算一時差異の代表例は賞与引当金です。
財務会計上は発生主義に基づき、従業員・役員が勤務したことにより賞与の支払が見込まれる場合には賞与引当金繰入額という費用を計上する必要があります。
一方、税務会計上は債務確定主義に基づき、賞与の支払が確定した事業年度に損金として計上する必要があります。
費用・損金となる点では同じですが、計上時期が異なります。
「財務会計では当期の費用とならないけれど、税務会計では当期の損金となる」ものを将来加算一時差異といいます。
将来加算一時差異の代表例は圧縮積立損ですが、あまり多くは存在しません。
「財務会計では費用となるけれど、税務会計では損金とならない」ものを永久差異といいます。
永久差異の代表例は交際費です。
交際費は、財務会計上は費用となりますが、税務会計上は一部の例外を除き損金となりません。
税効果会計は、費用となるタイミングと損金となるタイミングが異なる場合に認識しますが、永久差異は将来にわたり損金とはなりませんので、税効果会計の適用対象ではありません。
(2)繰延税金資産・繰延税金負債
将来減算一時差異が生じた場合、翌期以降の所得から差異の分だけ課税所得が減少します。
これにより税金の支払も少なくなりますので、その金額を資産として計上する必要があります。
これに該当する資産を繰延税金資産といいます。
繰延税金資産は、発生した将来減算一時差異に将来の税率を乗じて計算します。
同様に、将来加算一時差異が生じた場合、翌期以降の所得に差異の分だけ課税所得が加算されます。
これにより税金の支払が多くなりますので、その金額を負債として計上する必要があります。
これに該当する負債を繰延税金負債といいます。