IFRS第10号「連結財務諸表」 連結の範囲に注意!
IFRS第10号は、連結財務諸表、特に連結の範囲について記述しています。
日本基準とIAS/IFRS間の大きな違いは、日本基準が「被投資企業の議決権の50%超を持っている場合」「40%〜50%を持っている場合」「0%〜40%未満を持っている場合」に区分して、連結の範囲に含まれるかどうかの判断基準を具体的に示しているのに対し、IAS/IFRSは概念や考え方のみを示して、最終的にはそれぞれの会社の判断に任されている、ということが挙げられます。
(1)連結財務諸表とは
日本基準では、個別財務諸表がいわゆる一般の財務諸表で、ある法人の1年間の財政状態と経営成績を表示する書類です。
個別財務諸表がもっとも基本的な情報源として有用なのですが、現在の上場企業は子会社や関連会社が多く、それぞれの法人の財務諸表だけを確認してもグループ全体の状況が把握できません。
そこで、個別の法人だけではなく、グループ企業全体の財政状態と経営成績を表示した書類が連結財務諸表です。
基本的にはグループ企業全体の売上、仕入などを合計して作成しますが、一部特殊な処理をすることがあります。
なお、IAS/IFRS上の「個別財務諸表」は全く異なる概念ですので、混同しないようにしましょう。
(2)連結の範囲
IFRS第10号では、以下の3要素が全て揃った場合に、被投資企業を連結財務諸表の連結対象に組み入れます。
1 被投資企業に対するパワー
企業が被投資企業の議決権を50%超獲得している場合はもちろん、自社と子会社をあわせて実質的に50%超の議決権を獲得しているような場合にも、被投資企業へのパワーを持っているものと認められるでしょう。
2 被投資企業への関与からのリターン
企業が被投資企業から何らかのリターンを得ている必要があります。
一般的には配当ですが、企業が被投資企業に投資をするに至った経緯も考慮に入れて検討する必要があるでしょう。
3 被投資企業に対するパワーを、投資企業へのリターンを得ることに活かす能力
被投資企業に対してパワーを持ち、何らかのリターンを得ていたとしても、両者に関連がなければ支配しているとは言えません。
IFRS第10号では、関連がない事例として「代理人として議決権を獲得しているに過ぎず、自分の意思で議決権を行使できない場合」が挙げられています。