IAS第19号「従業員給付」
将来の退職金支払のための費用を認識!
IAS第19号は、「どれだけ将来の退職金支払義務が発生したのか」を計算・表示する方法について記述しています。
IAS第19号では、退職金とは賃金の後払いなので、毎事業年度ごとに従業員に実際に支払っている賃金の他に、労働の対価として将来の退職金の支払義務が発生しているという概念を前提としています。
(1)退職給付費用
退職給付費用、つまりその事業年度に発生した退職金支払義務の費用は以下①〜③の金額の合計として認識されます。
なお、①・②については純損益で認識されますが、③については損益として認識せず、その他の包括利益に直接反映されます。
①勤務費用
勤務費用は、具体的には以下の1〜3の金額の合計額です。
- 当期勤務費用
当期に労働の提供を受けたことにより、退職金支払義務が発生した金額です。 - 過去勤務費用
退職金制度の改定により、過年度に認識した「当期勤務費用」が変動したことから発生した金額です。
例えば、退職金の支払額を増額する制度変更をした場合、過去に認識した当時の「当期勤務費用」は結果的に過少だったと言えます。
すでに認識したこれまでの「当期勤務費用」と、退職金制度の改定により適正と見込まれるこれまでの「当期勤務費用」の差額が過去勤務費用です。 - 清算損益
清算損益とは、企業が退職金を支給する従業員の数を大幅に削減したことにより、将来の退職金の支払義務が変動した際の変動額です。
②利息費用
将来の退職金の支払額は割引後の金額で認識されています。利息費用とは、割り引かれた将来の退職金の支払時期が近づいたことにより発生する、退職金の支払額の増加です。
③再測定
再測定とは、年金を支払うために積み立てていた資産を運用する際の収益の見積もりと実際の収益の差額など、予測と事実の差額です。