IFRS第16号「リース」の借り手への影響に注意しましょう
IAS17からIFRS第16号に変更されたことによるリース取引の貸し手への影響は基本的にありません。
しかし、リース取引の借り手にとっては、ほぼ全てのリース取引を貸借対照表に計上しなければならないため、極めて大きな影響を受けることに注意が必要です。
これまでも、ファイナンス・リースについては貸借対照表に計上していました。
IFRS第16号の強制適用後は、ファイナンス・リース以外にも、以下の【リース取引の定義】を満たした取引についてはファイナンス・リースと同様の会計処理が必要となります。
【リース取引の定義】
「資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約又は契約の一部」
【契約の定義】
「識別された資産の使用を支配する権利を移転するもの」
企業会計基準委員会の審議によれば、具体的には以下の2つを満たした場合、その契約はリースと判定されます。
- 特定された資産の使用からの経済的便益のほとんどすべてを得る権利
- 特定された資産の使用を指図する権利
なお、1つの取引にリース取引と非リース取引が含まれている場合、契約対価をリース取引と非リース取引に配分して、リース取引についてこの会計基準を適用することが原則です。
しかし、実務上の簡便法として、その取引全てを1つのリース取引として認識することが認められています。
なお、この簡便法は会計方針なので、継続して適用しなければいけません。
他にも、①少額リース②取引期間が1年未満の短期リースについては、この基準を適用することなく費用処理を行うことができますが、①少額リース②短期リースの金額をそれぞれ財務諸表に注記しなければいけません。
この基準の適用により、会計処理の負担が大きくなると共に、貸借対照表上の資産・負債が大きくなるためROAが悪化する可能性に注意が必要です。
なお、純利益への影響はありませんが、リース費用の一部が財務費用に計上されることにも目を向けるといいでしょう。
また、賃借している不動産・傭船契約を結んでいる船舶をオンバランスする必要が生じる可能性が高いです。
全国展開しているチェーン店や海運業への影響は特に大きいため、特に早期に慎重な対応が求められます。