IAS第32号「金融商品:表示」 実質的な義務に注目!
IAS第32号は金融商品の表示について記述しています。日本基準でもIFRSでも、負債と資本を厳密に区別しなければならないのは同様です。
しかし、日本基準が法的形式をより重視するのに対して、IAS/IFRSは法的形式よりも実質的に負債なのか、それとも資本なのかという点に着目します。
(1)負債と資本の区別
IAS第32号では、以下のどちらかの義務が存在する場合に負債と分類されます。
- 現金又はその他の金融資産を引き渡す義務
- 当該発行者にとって潜在的に不利な条件で、他の企業と金融資産又は金融負債を交換する義務
例えば、普通株式の所有者は資本(利益剰余金)から配当を受ける権利を与えられています。
しかし、企業は必ず配当をする義務があるわけではありません。
したがって、株式の発行は上記の義務のいずれも存在せず、負債ではなく資本となります。
(2)取得請求権付株式・取得条項付株式
日本の会社法では、株主が会社に対して「自分が持っている株式を買い取ってほしい」と請求できる取得請求権付株式や、一定の条件を満たしたら会社が株主の同意なく株式を買い取ることができる取得条項付株式の発行が認められています。
日本基準では、これらの株式の発行も資本取引として会計処理を行うことが求められています。
しかし、IAS第32号では、これらの株式の発行は「現金又はその他の金融資産を引き渡す義務」があるとみなされ、負債として処理することが求められることに注意が必要です。