IAS第2号「棚卸資産」
日本基準とほぼ同じですが、製造間接費に注意!
IAS第2号は棚卸資産について記述されていますが、これは日本基準とほぼ同じです。
この章では、IAS/IFRSと日本基準の相違点を中心に見ていきましょう。
(1)棚卸資産の範囲
・貯蔵品
日本基準では、通常は売却を予定しておらず、将来販管費として費用処理する資産であっても棚卸資産、具体的には「貯蔵品」として計上しています。
具体的には以下のようなものが「貯蔵品」として計上されています。
【貯蔵品の例】
買い置きの切手や収入印紙、文具など
お客様に無償で頒布する試供品
販売促進のためのパンフレットなど
一方、IAS第2号では棚卸資産を「生産過程またはサービスの提供にあたって消費される原材料または貯蔵品」と定義づけていますが、上記の「貯蔵品」はこの定義に当てはまりませんので、棚卸資産として計上されません。
通常は「前払費用」などとして処理されるものと思われます。
・交換部品等
日本基準では、自社が利用している機械の消耗・破損に備えた交換部品等に関する特別な規定はありません。
したがって棚卸資産のうち「貯蔵品」として計上します。
一方、IAS第2号では「1年を超えて使用すると予測される主要交換部品及び予備器具は、有形固定資産に含めて計上する」と定められていますので、この定義に当てはまる交換部品は棚卸資産ではなく、有形固定資産と表示されることとなります。
(2)棚卸資産の測定方法
棚卸資産は資産の代金に、購入手数料や関税、保管費などの付随費用を加えたものを取得原価とします。
日本基準では、棚卸資産の測定方法として実際の取得原価を用いるほか、標準原価法や売価還元法など、他の方法で会計処理を行うこともできます。
なぜなら、取得原価を計算するのは手間と時間がかかるからです。
IAS第2号では、これらの方法はあくまで実際の取得原価に近いことが確認できる場合にのみ用いることが可能、ということに注意が必要です。
(3)製造間接費の配賦
原価計算の際の製造間接費の取扱いが日本基準とIAS第2号の間で異なりますので、特に製造業を営んでいる場合には注意が必要です。
かなり高度な内容になってしまうため詳細は割愛しますが、日本基準ではすべての製造間接費を原価、または棚卸資産として処理します。
一方、IAS第2号では、予定内・予定外を問わず、操業度差異、能率差異、遊休生産力などの生産余力を期間費用として処理しますので、製造能力に余裕がある場合には営業利益に悪影響を及ぼす恐れがあります。