IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」
経過措置や免除規定を活用しよう!
IFRS第1号は、IAS/IFRSを初めて適用する際の手続について記述しています。
特に導入に手間がかかると予想される企業結合や有形固定資産などに経過措置が認められていますので、必要に応じて活用するといいでしょう。
(1)原則
日本基準で財務諸表を作成していた企業がIFRSに移行する場合には、原則として過去に遡及してIFRSの規定を適用する必要があります。
また、IFRSを適用開始した時点で以下のことを行い、IFRS開始財政状態計算書を作成する必要があります。
【IFRSを適用開始した時点での作業】
①IFRSで認識しなければならない全ての資産・負債を認識する
②IFRSで認識してはならない全ての資産・負債を認識しない
③従来の会計基準とIFRSで別の分類となっている項目(従来の会計基準では持分だが、IFRSでは負債とされている取得請求権付株式など)については、IFRSに合わせて分類を変更する
④認識された全ての資産・負債をIFRSにより評価する
(2)例外
初度適用の例外には「行うことが禁止されているもの」「行うことが困難なので、企業の選択により行わなくてもいいもの」の2種類があります。
【行うことが禁止されているもの】
①見積もり
会計上の見積もりについては、従来の見積もりのまま変更してはいけません。ただし、計算間違いや資料の誤読など、過去に行った見積もり手続き自体が誤っていた場合にはその限りではなく、「誤謬の訂正」つまり会計帳簿が誤っていたものとして処理する必要があります。
②金融資産・金融負債の認識中止
2004年1月1日より前に発生した取引の結果として、金融資産や金融負債(デリバティブを除く)が存在しなくなったものと処理した場合、IFRSの適用をきっかけに再度認識してはいけません。
③ヘッジ会計
IFRS移行日にヘッジ指定していないものについては、遡及してヘッジ指定をしてはいけません。
④非支配持分
非支配持分の負の残高処理については、IFRS移行日から適用しなければいけません。
遡及適用は事実上その企業の会計帳簿を初めから作り直すに等しい作業ですから、現実的には不可能に近いため、IFRS第1号に規定された経過措置や免除規定(行うことが困難なので、企業の選択により行わなくてもいいもの)を最大限活用するといいでしょう。