IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」
日本基準にはない制度です
IAS第29号は、ハイパーインフレが起きている通貨を「機能通貨」としている場合に、一般物価指数を利用して財務諸表の数字を修正及び再表示する必要があることについて記述しています。
この制度は日本基準にはなく、IAS/IFRS独自の制度ですが、日本企業がハイパーインフレを起こす通貨を機能通貨とすることは多くないでしょうから、あまり意識する機会は多くないかもしれません。
(1)インフレーションと超インフレ経済
インフレーションとは、物価水準が持続的に上昇し、反射的に貨幣の購買力が下落することを指します。
超インフレ経済とは、インフレーションが急激に起きている経済状態のことです。
IAS第29号は、超インフレ経済と判断される例を以下のように挙げていますが、この状態に限定されているわけではありません。
- その貨幣を利用している一般市民が、自国通貨を非貨幣性資産(不動産や金などの現物)や安定した外貨に投資する状況
- その貨幣を利用している一般市民が、物価を安定した外貨で考える(例えば、スーパーにおいて自国通貨ではなくドルで価格が表示されているなど)状況
- 短期の信用売買であっても、決済までの期間の貨幣価値の変動(下落)を考慮した価格で行われる状況
- 利率や賃金、価格が物価指数に連動している状況
- 過去3年間の累積インフレ率が100%に近い、または100%を超える状況
(2)財務諸表での表示
IAS第29号により超インフレ経済であると判断された場合、財務諸表の全ての項目を一般物価変動指数により修正します。
その過程で利得・損失が生じた場合、営業外損益として認識します。