IAS第36号「資産の減損」 戻し入れがあることに注意!
IAS第36号は資産の減損について記述しています。減損とは、資産価値が下落している際にその事実を財務諸表に反映させるため、資産の帳簿価額を減少させる手続きです。
日本でも「固定資産の減損に係る会計基準」がすでに適用されているため大きな違いはありませんが、以下の点に注意が必要です。
なお、IAS第36号の2に定められている一定の資産については適用が除外されています。
(1)減損の兆候
日本基準では、「このようなことが発生した場合には減損が生じているかもしれないから、その資産を分析しなさい」というルールが詳細に定められています。
しかし、IAS第36号では、「より広範囲に目を配り、総合的に減損が生じているかどうか判断しなさい」と定められています。
したがって、IAS第36号では日本基準のように機械的に減損の兆候を判断しにくく、ひとつひとつの資産の価値を慎重に検討する必要があります。
(2)減損の戻し入れ
日本基準では、一度減損を認識して帳簿価額を減少させた場合、その後資産価値が上昇したからといって帳簿価額を増額することはありません。
しかしIAS第36号では、その後資産価値が上昇した場合には、「のれん」を除き減損を認識して減少させた金額を限度に帳簿価額を増額させる必要があります。
したがってIAS第36号では、ひとつひとつの資産の価値が減少しているかどうかに留まらず、過去に減損を認識した資産の価値が回復しているかどうかについても詳細な検討が必要です。
(3)減損を判定する数値
将来、その資産がもたらす収入のことを将来キャッシュ・フロー(将来CF)といいます。
将来もたらされる収入より、現在もたらされる収入の方が高価値なので、その価値を調整することを「割り引く」といいます。
割り引く前のキャッシュ・フローを割引前将来CF、割り引いた後のキャッシュ・フローを割引後将来CFといいます。
日本基準では、減損を判定する際に割引前将来CFを用いますが、IAS第36号では割引後将来CFを利用することに注意が必要です。